輸入財と国内財の代替の弾力性
2013年10月2日 学校・勉強Mario J. Crucini and J. Scott Davis (2013) "Distribution Capital and the Short- and Long-run Import Demand Elasticity."のセミナーに出席。
国内で生産された財と海外から輸入される財がどの程度代替的なのかは、国際貿易という経路を通じて経済の振る舞いがどのように規定されるのかを明らかにする上で最も基本的な要素であると言える。
しかし、Ruhl (2005)やArkolakis, Eaton and Kortum (2012)が議論しているように、この基本的なパラメーターについて、国際貿易論と国際マクロ経済学とで見解が一致していない 。
主として長期的均衡に焦点を当てる国際貿易論では高い代替の弾力性が仮定される ことが多いのに対し、短期的な景気変動に分析の主眼を置く国際マクロ経済学では低い代替の弾力性が仮定されることが多い 。
Crucini and Davisは、国内財・輸入財の双方が最終消費者の手に渡るまでの過程で流通業者の仲介が必要であり、国内財を取り扱う流通業者と輸入財を取り扱う流通業者のそれぞれが投入する資本ストックは各自に固有のものであり、互いに融通できないとの仮定を置くことで、一国の生産性の変動など景気変動を引き起こすような外生的なショックに対して、輸入財と国内財の代替が即座には発生しないようなモデルを構築している。
論文を読んでいて「これは良い着想だ」と思ったのは、 既に投入された資本は両者の間で融通できないが、新規投資をどちらにどれだけ投下するかは自由に決定できるとしているところ。
↓
これにより、毎期毎期の新規投資の積み重ねを通じて、国内財取扱い業者と輸入財取扱い業者の保有する資本ストックの配分がゆっくりと調整されていくため、長期的には国内財と輸入財は高い代替の弾力性をもつとの貿易論の前提との整合性が確保される。
そして、このように短期と長期で代替の弾力性が低い状態から高い状態へと変化するモデルを作ることによって、Jカーブ効果(実質為替レートが減価しても、最初は経常収支が悪化し、後から改善していくという現象)を説明することにも成功している。
流通セクターの生産関数に用いられるパラメーターの設定についても、卸売価格と流通マージンに関するミクロデータから丹念に吟味している労作。面白い。
国内で生産された財と海外から輸入される財がどの程度代替的なのかは、国際貿易という経路を通じて経済の振る舞いがどのように規定されるのかを明らかにする上で最も基本的な要素であると言える。
しかし、Ruhl (2005)やArkolakis, Eaton and Kortum (2012)が議論しているように、この基本的なパラメーターについて、国際貿易論と国際マクロ経済学とで見解が一致していない 。
主として長期的均衡に焦点を当てる国際貿易論では高い代替の弾力性が仮定される ことが多いのに対し、短期的な景気変動に分析の主眼を置く国際マクロ経済学では低い代替の弾力性が仮定されることが多い 。
Crucini and Davisは、国内財・輸入財の双方が最終消費者の手に渡るまでの過程で流通業者の仲介が必要であり、国内財を取り扱う流通業者と輸入財を取り扱う流通業者のそれぞれが投入する資本ストックは各自に固有のものであり、互いに融通できないとの仮定を置くことで、一国の生産性の変動など景気変動を引き起こすような外生的なショックに対して、輸入財と国内財の代替が即座には発生しないようなモデルを構築している。
論文を読んでいて「これは良い着想だ」と思ったのは、 既に投入された資本は両者の間で融通できないが、新規投資をどちらにどれだけ投下するかは自由に決定できるとしているところ。
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これにより、毎期毎期の新規投資の積み重ねを通じて、国内財取扱い業者と輸入財取扱い業者の保有する資本ストックの配分がゆっくりと調整されていくため、長期的には国内財と輸入財は高い代替の弾力性をもつとの貿易論の前提との整合性が確保される。
そして、このように短期と長期で代替の弾力性が低い状態から高い状態へと変化するモデルを作ることによって、Jカーブ効果(実質為替レートが減価しても、最初は経常収支が悪化し、後から改善していくという現象)を説明することにも成功している。
流通セクターの生産関数に用いられるパラメーターの設定についても、卸売価格と流通マージンに関するミクロデータから丹念に吟味している労作。面白い。
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