日本の水産業は復活できる! ―水産資源争奪戦をどう闘うか
2013年8月3日 読書
マルハニチロで数多くの買付交渉に携わった著者による日本の水産業への提言書。
食生活の欧風化・現代化が進む中で陰りが見えるとはいえ、「日本は魚食大国」との認識を持っている日本人はまだかなりいると思いますが、実は、水産物の多くはもはや日本国内ではなく海外からの輸入品であり、日本はいまや世界一の水産物輸入国となっています。
サーモンだけでなく、アジやサバやイワシも輸入品であることが珍しくありません。
著者は、日本の水産業が衰退した原因を「資源管理の失敗」に求めています。
すなわち、自分の農地を自分で管理する農業と異なり、「入会(いりあい)」の考え方の下、漁場が共同管理される漁業では「共有地の悲劇」が起こりやすい、との指摘です。
一本釣りやはえ縄など、漁獲能力が制限されていた時代には、漁業者間の共同管理でも悲劇は起きなかったが、トロールや巻き網の登場により漁獲能力が大幅に向上した現代にあっては、獲ったもの勝ち・早い者勝ちの「オリンピック方式」では、「獲れるうちに獲ってしまえ」との考えの下、十分生育していない個体までもが乱獲され、漁業資源の枯渇を招くおそれが強い、とのこと。
結果的には、脂が乗っていない小さな個体が市場に出回ることになるので、価格も安くなり、漁業収益も低下してしまうとの懸念が示されています。
これに代わり著者は、ノルウェーなどの成功体験を踏まえ、
1)Individual Quota (IQ):個別割当
2)Individual Transferable Quota (ITQ):譲渡可能個別割当
3)Individual Vessel Quota (IVQ):漁船別個別割当
など、漁獲量を漁業者ごとに割り当てる方式で漁獲規制を行い、漁業資源の持続可能性を確保することを提唱しています。
こうした方式を採用する国々では、漁獲能力の高い漁船で十分脂の乗った成魚を確実に捕獲し、高価格で売ることにより漁業者も十分な収益を確保し、かつ漁業資源も維持されているとのことです。
個々の経済主体の近視眼的な行動が共同体全体に(負の)影響を及ぼす場合に、どのようなルールで個々の主体の行動を規律すべきか、という課題について、ごくわかりやすく記述している好例かと思います。
食生活の欧風化・現代化が進む中で陰りが見えるとはいえ、「日本は魚食大国」との認識を持っている日本人はまだかなりいると思いますが、実は、水産物の多くはもはや日本国内ではなく海外からの輸入品であり、日本はいまや世界一の水産物輸入国となっています。
サーモンだけでなく、アジやサバやイワシも輸入品であることが珍しくありません。
著者は、日本の水産業が衰退した原因を「資源管理の失敗」に求めています。
すなわち、自分の農地を自分で管理する農業と異なり、「入会(いりあい)」の考え方の下、漁場が共同管理される漁業では「共有地の悲劇」が起こりやすい、との指摘です。
一本釣りやはえ縄など、漁獲能力が制限されていた時代には、漁業者間の共同管理でも悲劇は起きなかったが、トロールや巻き網の登場により漁獲能力が大幅に向上した現代にあっては、獲ったもの勝ち・早い者勝ちの「オリンピック方式」では、「獲れるうちに獲ってしまえ」との考えの下、十分生育していない個体までもが乱獲され、漁業資源の枯渇を招くおそれが強い、とのこと。
結果的には、脂が乗っていない小さな個体が市場に出回ることになるので、価格も安くなり、漁業収益も低下してしまうとの懸念が示されています。
これに代わり著者は、ノルウェーなどの成功体験を踏まえ、
1)Individual Quota (IQ):個別割当
2)Individual Transferable Quota (ITQ):譲渡可能個別割当
3)Individual Vessel Quota (IVQ):漁船別個別割当
など、漁獲量を漁業者ごとに割り当てる方式で漁獲規制を行い、漁業資源の持続可能性を確保することを提唱しています。
こうした方式を採用する国々では、漁獲能力の高い漁船で十分脂の乗った成魚を確実に捕獲し、高価格で売ることにより漁業者も十分な収益を確保し、かつ漁業資源も維持されているとのことです。
個々の経済主体の近視眼的な行動が共同体全体に(負の)影響を及ぼす場合に、どのようなルールで個々の主体の行動を規律すべきか、という課題について、ごくわかりやすく記述している好例かと思います。
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