西洋美術評論の第一人者である著者が、西洋美術との比較により日本美術の特質を浮き彫りにする随筆集。

1.伊勢神宮の式年遷宮にみられるように、特定の様式に基づいて作られた「もの」ではなく、様式そのものである「かた」が後世まで継承され、起源の異なる複数の様式が同時代に共存していること

2.高橋由一や安田會太郎のように洋画の影響を強く受け、その技法を吸収しようとした日本人にもなお視形式として根強く残っていたことが確認される平面的な画面構成

3.画面上縁から画面内部に垂れ下がる藤や柳の枝のような「枝垂れモチーフ」に象徴される画面と画面外部との連続性(「部分による全体の暗示」)

4.洋画の「写実性の原理」ではなく、「装飾性の原理」に基づき、主要なモチーフだけを描き、不用なものを金箔や金泥等で覆い隠す大胆なクローズアップの手法

5.屏風絵や絵巻物にみられる季節の移り変わり等の同一画面内での異時点の共存

などを日本絵画の特徴として挙げ、画面構成の統一性に特徴をもつ西洋絵画と比較した場合、それまでの伝統を乗り越えようと取り組んでいた印象派以降の近代西洋画家にとって、いかに日本絵画の技法が驚くべき大胆な画面構成法として映ったであろうかを明解に解説する。

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